民法③
AはBに金銭を貸し付け、この貸金債権を担保するためにB所有の土地の上に建っているB所有の建物に抵当権の設定を受けて、その登記を備えた。
⭐︎⭐︎
Aの抵当権が実行された場合、抵当権設定時に建物内に置いていたB所有の家電製品のテレビには抵当権の効力は及ばないか?
→◯
抵当権の効力は、設定行為に別段の定めがない限り、抵当不動産の附加一体物に及ぶ(民法第370条)。
しかし、テレビは附加一体物には含まれないため、抵当権の効力は及ばない。
抵当権が及ぶ以下
附加一体物の具体例
建物 付合物 雨戸、入り口の扉、増築部分など
従物 ふすま、障子、畳など
土地 付合物 植木、とりはずしできない庭石など
従物 石灯籠、とりはずしできる庭石など
従物は独立したもの。
抵当権の効力は、原則として、抵当権設定当時の従物にもおよぶ。
⭐︎抵当権設定登記後にBが同抵当建物をEに賃貸した場合、BのAに対する債務不履行後に生じた賃料について抵当権の効力が及ぶので、抵当権の実行としてAはこの賃料から優先的に弁済を受けることができるか?
→◯
抵当権の効力は担保債権に不履行があればその後の抵当不動産の果実に及ぶ(民法第371条)。
抵当権の効力は、原則として、抵当権の設定された土地から生ずる天然果実にもおよぶか?
→✖️
抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ(民法第371条)。したがって、抵当権の効力は、原則的には天然果実におよばない。
Aが「もち米」を50キロ買う契約をB米店との間で行い、Bによる引渡しの準備がまだ終わっていない場合に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
引渡し場所についてA・B間で決めていなかった場合に、BはAが取りに来るまで待っていればよいか?
→✖️
弁済をすべき場所について特約がなければ、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において(持参債務の原則)、それぞれしなければならない(民法第484条)。
そして、「もち米」は種類物であり、ここにいう「その他の弁済」にあたるから、Bは、債権者Aの現在の住所に持参して「もち米」を引き渡さなければならない。
したがって、「BはAが取りに来るまで待っていればよい。」とする本肢は誤りである。
もち米」50キロの所有権は、目的物が特定される前でも、特約がなければ、A・B間の売買契約をした時に移転するか?
→✖️
「不特定物の売買においては、特段の事情のないかぎり、目的物が特定した時に買主に所有権が移転するものと解すべきである。」(最判昭和35年6月24日)
したがって、「もち米」50キロの所有権は、目的物が特定されていない場合、A・B間の売買契約をした時に移転しない。
消費貸借については、返還時期の合意がないときには、貸主の請求があれば借主は直ちに返還しなければならないか?
→✖️
当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、
相当の期間を定めて返還の催告をすることができる(民法第591条1項)。
したがって、借主は相当の期間内に返還すればよく、「直ちに返還しなければならない。」わけではない。
なお、借主は、返還の催告がなかったとしても、いつでも返還をすることができる(民法第591条2項)。
使用貸借は、賃貸借と同様に借主の死亡によりその効力を失うか?
→✖️
使用貸借は借主の死亡によりその効力を失うが(民法第599条)、
重要‼️
賃貸借は借主の死亡によっても効力は失わず、相続の対象となる❗️
債務不履行の場合は、債権者に過失があれば裁判所はそれを斟酌することができるにとどまるが、不法行為の場合は、被害者に過失があれば裁判所は必ずそれを斟酌しなければならないか?
→✖️
債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、①損害賠償の責任及び②その額を定める(民法第418条)。一方、被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる(民法第722条)。 したがって、本肢は必要的考慮と任意的考慮の説明が逆になっている
被害者に国は優しい。
不法行為→Aボコボコにやられた、Aにも過失ある。
裁判所相手がAにも過失があるって言ってきた時に考慮しよ。
言ってくるまでは知らんぷり。
だってAかわいそうじゃん。
債務不履行の場合は、胎児は損害賠償請求権の主体となることができるが、不法行為の場合は、主体となることができないか?
→✖️
権利能力は出生によって始まるものであるため(民法第3条1項)、出生前の胎児の段階では原則として権利能力は認められないが、民法ではその例外として
相続(民法第886条)
遺贈(民法第965条)
については、胎児も既に生まれたものとみなされる。したがって、債務不履行と不法行為の説明が逆になっている。
債権者代位権の要件
①債権保全の必要性があること
②被保全債権の弁済期が到来していること
③代位の対象の権利が代位されうる権利であること
④代位される者(債務者)が、権利の行使をいまだしていないこと
詐害行為取消権の要件
①被保全債権の存在
②債務者における詐害行為及び詐害の意思のあること
③受益者・転得者が詐害の事実について知っていたこと❗️
債権者は、債務者の財産から満足を得られない場合には、債権取得前に債務者が行った贈与契約を詐害行為として取り消して財産を取り戻すことができるか?
→✖️
債務者の行為を詐害行為として民法第四二四条を適用するには、その行為が取消権を行使する債権者の債権発生後になされたことが必要である(最判昭和33年2月21日)。
☪️
エ、債務者が第三者に金銭を贈与したことにより、自己の債権の満足が得られなくなっただけではなく、他の債権者の債権も害されるようになった場合には、取消債権者は自己の債権額を超えていても贈与された金銭の全部につき詐害行為として取り消すことができるか?
→✖️
債権者取消権の目的物が金銭のような可分な物であるような場合は、自己の債権を越えて、取り消すことはできない。
⭐︎
債権者は自己の債権について、詐害行為として取り消し、受益者から取り戻した財産から他の債権者に優先して弁済を受けることができるか?
→✖️
債権者取消権による取消しは、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずるもので(民法第425条)、原則として優先して弁済を受けることはできない。もっとも、実際には金銭における債権者取消権では行使した債権者に直接返還することが認められているため、自己の有する債権と債務者へ返還する債務を相殺するとによって事実上の優先弁済を受けることができる(最判昭和37年10月9日)
債権者取消権は、取消しの対象となる法律行為があったときから2年間行使しないときは、時効により消滅するか?
→✖️
債権者取消権は、債権者が取消しの「原因を知った時から」2年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも、同様とする(民法第426条)
☪️
詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、債権者が複数存在するときは、取消債権者は、総債権者の総債権額のうち自己が配当により弁済を受けるべき割合額でのみ取り消すことができるか?
→✖️
前半の「詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから」とする点は妥当であるが(民法第425条)、後半が妥当ではない。
詐害行為取消権(民法第424条、426条)は、詐害行為によって逸出した財産を取り戻し、債権者の共同担保を保全することを目的とするものであるから、それに必要な範囲において行使すれば足りる。
そして、
この必要な範囲とは、
原則として取消債権者の債権額を限度として❗️
(大判大正8年2月3日)、他に多くの債権者がいる場合でも、それを考慮には入れないとされている(大判大正9年12月24日)。
したがって、本肢の「自己が配当により弁済を受けるべき割合額でのみ取り消すことができる」とする記述は妥当ではない。
相続放棄は、責任財産を積極的に減少させる行為ではなく、消極的にその増加を妨げる行為にすぎず、また、相続放棄は、身分行為であるから、他人の意思によって強制されるべきではないので、詐害行為取消権行使の対象とならないか?
→◯
「相続の放棄のような身分行為については、民法424条の詐害行為取消権行使の対象とならないと解するのが相当である。なんとなれば、右取消権行使の対象となる行為は、積極的に債務者の財産を減少させる行為であることを要し、消極的にその増加を妨げるにすぎないものを包含しないものと解するところ、相続の放棄は、相続人の意思からいっても、また法律上の効果からいっても、これを既得財産を積極的に減少させる行為というよりはむしろ消極的にその増加を妨げる行為にすぎないとみるのが、妥当である。
また、相続の放棄のような身分行為については、他人の意思によってこれを強制すべきでないと解するところ、もし相続の放棄を詐害行為として取り消しうるものとすれば、相続人に対し相続の承認を強制することと同じ結果となり、その不当であることは明らかである。」(最判昭和49年9月20日)。
⭐︎
遺産分割協議は、共同相続人の間で相続財産の帰属を確定させる行為であるが、相続人の意思を尊重すべき身分行為であり、詐害行為取消権の対象となる財産権を目的とする法律行為にはあたらないか?
→✖️
共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得る(最判平成11年6月11日)。
なぜならば、遺産分割協議は、相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について、その全部又は一部を、各相続人の単独所有とし、又は新たな共有関係に移行させることによって、相続財産の帰属を確定させるものであり、その性質上、財産権を目的とする法律行為であるということができるからである。
したがって、遺産分割協議は詐害行為取消権の対象とならないとする本肢は妥当でない。
詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、債権者が複数存在するときは、取消債権者は、総債権者の総債権額のうち自己が配当により弁済を受けるべき割合額でのみ取り消すことができるか?
→
✖️
前半の「詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから」とする点は妥当であるが(民法第425条)、後半が妥当ではない。
詐害行為取消権(民法第424条、426条)は、詐害行為によって逸出した財産を取り戻し、債権者の共同担保を保全することを目的とするものであるから、それに必要な範囲において行使すれば足りる。
そして、
この必要な範囲とは、原則として取消債権者の債権額を限度として(大判大正8年2月3日)
他に多くの債権者がいる場合でも、それを考慮には入れないとされている(大判大正9年12月24日)。
したがって、本肢の「自己が配当により弁済を受けるべき割合額でのみ取り消すことができる」とする記述は妥当ではない。
併存的(重畳的)債務引受は、債務者(原債務者)の意思に反しても、債権者と引受人のみの契約でなすことができるか?
→◯
併存的債務引受ができる場面であるが、以下の3つが考えられる。
1 原債務者、新債務者、債権者の三面契約(契約自由の原則により、当然に可)
2 新債務者、債権者間の契約による併存的債務引受けは、原債務者の意思に反しても可
(併存的債務引受の効果は、原債務者と新債務者の連帯債務関係になるだけであり、債務引受後も、原債務者は債務を弁済することができるため)
3 原債務者、新債務者間の契約による併存的債務引受けは、第三者のためにする契約として成立し、債権者の受益の意思表示によって、債権者は新債務者に対する権利を取得する
したがって、併存的(重畳的)債務引受は、債務者(原債務者)の意思に反しても、債権者と引受人(新債務者)のみの契約でなすことができるとする本肢は妥当である。